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初めてのカンボジア訪問 昨年の夏、沖縄サミットに合わせて行った「JCBL九州・沖縄キャンペーン」のため、カンボジア人地雷被害者トゥン・チャンナレットさん(ICBL大使)が来日され、数日間を沖縄でご一緒しました。木製革椅子で勢いよく動きまわるナレットさんにお会いしてから4ヶ月後の2000年11月、カンボジアを訪問する機会を得ました。 * 訪問者:石丸敏子(地雷をなくす女たちの会)、浜本由里子(同)、松本栄子(JCBL事務局) 「カンボジアトラスト」訪問 今回の訪問の目的の1つは、JCBLの支援する「カンボジアトラスト」(以後CT)の「アウトリーチ・プログラム」を視察させてもらうためでした。私たちが訪問したのは、カンボジアトラスト・プノンペン事務所&クリニック&義肢装具士養成学校と、コンポンチュナンにあるクリニック及びに「アウトリーチ」とよばれるフィールドプログラムでした。 * JCBLの支援:2000年〜2002年までのアウトリーチプログラムに1万ドル CTのアウトリーチ・プログラムとは? これは、CTスタッフが、地雷被害者や障害ある方々を探しに出かけ、CTが提供することができる義足の提供サービスなどを行うことです。もちろん、すべてのニーズをCTだけで満たすことはできませんから、必要とされているサービスを提供する団体があれば、その別の団体を紹介もします。また、学費がないために学校にいけない障害を持つ児童には、学費等の支援も行っています。(今年度はユニセフが資金を提供)。 なぜ、CTはアウトリーチ活動を始めたのか カンボジア国内には、CTからさまざまなサービスを受けられるにも関わらず、まだ受けていないという方がたくさんいらっしゃいます。単に、C Tという団体を知らない方もあるでしょうし、CTの支援が必要な方でも、知らない場所へいくことや、知らない人・NGOに頼むのが気遅れしたり、お金がかかるのではないかと思い込みコンタクトをとれないでいたりするなど様々な理由が考えられます。そこで1998年に始められたのが、アウトリーチプログラムなのです。 アウトリーチ・プログラムの流れ アウトリーチプログラムは、まず村々の障害を持つ方がたを探すことから始まります。手順は、 フォローアップ(義肢・装具を受け取った後のCTのサービス) CTは、障害を持つ方を見つけ、必要なサービスを提供し、さらにフォローアップを行います。特に、子どもの場合は、成長も早くきめの細かい支援が必要となります。また、義肢・装具なども、使われているか、使われている場合は、どれくらいの時間か、痛みなどはないか、不具合はないか、修理が必要ではないかなどの確認が行われます。アウトリーチプログラムでは、アウトリーチワーカーが判断に困った場合には訪問したその日にCTのクリニックヘ連れていき、診察を受けてもらったり、あるいは別の日にでもクリニックへ来て診断を受けるように伝えます。 〈6才から18才までの子どもの場合〉 〈おとなの場合〉 データベースで管理 すべての患者さんの情報はデータベース管理されています。それぞれの患者さんは、次はいつ訪問をうけるべきなのか、それは自宅かCTのクリニックか、また定期的な訪問をうけるのか、あるいは患者さんが必要な時に来訪をするのかなどがすべて記録されています。アウトリーチワーカーによる毎月の患者さんの訪問は、すべてこのデータベースの情報をもとに、理学療法士が調整しています。 コンボシチュナン(Kompong Chunang)でのアウトリーチプログラム コンポンチュナンは、首都プノンペンから車でおよそ1時間半ほどの町。とてもちいさな町で、食堂は2軒だけ。この町のゲストハウスSokha's Guest HouseはCTのクリニックから車で2〜3分のところにあり、一泊15ドルで(+朝食1ドル)。とても清潔で快適なお部屋でした。 この町には8つの地区(district)があり。この地区を担当するのはSAN Sydeoun(アウトリーチ・ワーカー:ORW)さん。彼女はすでに6つの地区をまわり、現在392人のアウトリーチプログラムの患者さんがいます。うち70人ほどは、毎月彼女がそれぞれ個人宅を訪問しています。残りの2地区は船でしか行けないため、まだ訪問できていないとのことです。 私たちは、SAN Sydeounさんについて、3人の女性地雷被害者のお宅をまわり、義足に不具合はないかなどを尋ねる彼女の仕事を見学させていただきました。訪問したのは、ソーカットさん(36才)。30才の時に田んぼで地雷を踏んで被害に遭いました。彼女には、2才位の小さなお子さんがいます。シューリーさん(48才)。1983年に川で地雷の被害に遭いました。ロットニーさん(43才)。1982年に川で地雷の被害に遭ったとのことでした。母と息子さんの3人暮らし。 3人の方々には、いずれもお家の外で立ち話のような形でお話を伺いましたが、3人とも長いスカートやズボンをはいておられたことに加えて (お二人は両足とも裸足でした)膝から下の義足のためでしょうか、とても自然な歩き方で、ぼんやり見ていたら、義足を使っていることに気が付かなかったかもしれません。ロットニーさんは、普段なら毎日ココナツを20個ほど自転車にのせて3キロほどの所にあるマーケットまで売りにいくと話していました。伺った日は、お母さんの体の具合が悪く、マーケットに行かなかったとのことでした。私が「ココナッツは一個どれくらいで売れるのか?」、「マーケットまで何キロ?」「自転車に乗ってもいいか?」などとたくさん質問したためでしょうか、帰りには、私達の車に5個ものココナツをおみやげにくださいました。彼女が20個のココナッツを自転車に乗せて走る姿が見たかったと思いました。頂いたココナツはCTの事務所に戻り、スタッフが上部をナイフで切ってくれ、ストローを差込んでココナツジュースを楽しみました。ちなみにココナツは「1個400リエル(約11円位)」でマーケットで売るとのことでした。ロットニーさん、ごちそう様でした。 このように、マーケットでココナツを売ったり、幼い子どもの面倒を見たりと、村での日常生活をつづけながらCTのサービスを受けられるというのは、患者さんの立場にたっていて、すばらしいプログラムだと感じました。カンボジアを訪問し、庶民には公共交通機関は基本的にはオートバイタクシーが中心であること、道路のひどいでこぼこ、短い距離でも移動に日本の何倍もの時間がかかることなどの現実を知るにつれて、東京ではなかなか想像できなかった「アウトリーチプログラム」の重要性が分かってきました。また、診察代、義肢・装具代、交通手段・費用、宿泊費、治療中の食費等の包括的な支援が基本的にはすべて無料で受けられるということも非常に現実に即した支援のあり方であると感じました。さらには、義肢・装具は使い続ける限り、不具合があればそれを直し、また成長や体の変化に応じて作り替えたり、部品を交換するなど、使うのをやめるまで支援・サービスが必要となることを再確認しました。こうした活動を息長く支援していくことの重要性をとても強く感じることができた訪間でした。 カンボジア人によるカンボジア人のためのサービスを同宿して CTが運営する義肢装具士養成学校を卒業したカンボジア人義肢装具士さんもすでに40人近くになっています。が、まだまだカンボジアの方だけで運営するには至っていません。その日を目指して支援をしていくことができればと思います。最後になりましたが、今回の訪間は、藤井一幸さんをはじめとする「カンボジアトラスト」のスタッフの皆さん、JCBLスタッフ、日本国際ボランティアセンター・プノンペン事務所スタッフの皆さんのサポートがなければ実現しませんでした。この場を借りて深く感謝申し上げます。 *カンボジアには、地雷によって障害を負った人が約4万人、紛争・貧困などの社会的原因に深く関係する身体に障害を持つ人が約5万人(ポリオ・肢体不自由・脳性小児麻痺など)います。 『カンボジアトラスト』プロファイル - 本部:英国 (*ここには、日本人の義肢装具士でもありCTの義肢装具士養成学校の講師でもある藤井さん、JCBLの団体会員でもある HOPE希みの会から派遣の佐々木さんの2名もいる) URL:http://www.cambodiatrust.org.uk カンボジアでの主な活動 1992年の設立以来の義肢・装具提供総数:14,000以上 *女性義肢装具士 |